電気の基礎知識2
電気の基礎知識の第二弾です。
基本的なサーキットテスターの使い方と基本的な故障診断の
方法を解説してみたいと思います。
現在の自動車は、電気信号によってさまざまな電装品などを制御しています。エンジンやトランスミッションなどの制御はECU(コンピューター)で演算し自動車を最適な状態で走行可能にしています。
これらの故障診断にもテスター等は使用しますが、ほとんどの場合は故障診断機をしようして、チェックランプが点灯した際などに診断コードやデータモニターで確認します。
最近の自動車は賢いので故障の種類によっては自動車が故障を教えてくれます
チェックランプ点灯というやつです。
しかしすべてチェックランプが点灯するわけではありません。
こんなとき電装系の故障であれば配線図とテスターが活躍します。
プロはこれらの作業を効率よく配線図等を見ながら行うわけですが、ここではDIYの時に起こるであろう電気のトラブルについて解説していきたいと思います。
また、サーキットテスターについてはデジタルテスターをメインに解説をしていきます。
※サーキットテスターを使う注意点として、抵抗測定レンジ、電流測定レンジのまま電圧測定はしないことです
テスターのヒューズが切れる、もしくは壊れる可能性があります。
また自動車のコンピュータの測定はアナログのテスターではテスター自体の内部抵抗が小さすぎるために
正確な測定はできません。
コンピュータ関連の測定はデジタルテスターで行うようにしましょう。
車の電気トラブル
DIYの初心者のトラブルといえば人為的なミスがほとんどだと思いますが
その際にどうやって解決したらよいかです
DIYでの電気のトラブルで多いのは配線ミスです。
@ショート(短絡)・・・プラスの電源ケーブルをボディーにアースしてしまった。
A接触不良・・・アースがしっかりとつながっていない、ギボシがきちんと接続されていないなどです。
ショートとはなに?接触不良とはなに?抵抗とはなに?アースとはなに?
厳密には違いますが自動車では下記のように理解しておくとわかりやすいと思います。
●抵抗=電気を消費するもの (ただし回路が成立していないと消費しない)
●ショート=抵抗を通らずにアースしてしまう
●接触不良=きちんと線(端子)どうしがつながっていないこと
●アースできている=バッテリのマイナス端子とつながっている状態
●アースできていない=バッテリのマイナス端子とつながっていない状態
と覚えておくとわかりやすいかもしれません。
自動車のボディはバッテリのマイナス端子とつながっているので、
自動車の金属部分(エンジンやフレームなど)に電装品からのマイナス配線を接続できれば
アースができたということですね。
塗装の表面に接続しても絶縁されてしまうのでアースはとれません。
塗装がされていないボルトやナット、自動車に最初から用意されているマイナス配線を使えば
しっかりとアースを取ることができると思います。
アースがとれているかいないかを調べるにはサーキットテスターの抵抗レンジを使用します。
確実にアースが取れているであろう場所にサーキットテスターを接続し、抵抗レンジで
自分がアースを取りたい場所とつながっているかという簡易点検です。
下記の画像が点検をわかりやすくしたものです。本来であれば室内の電装品を取り付ける際に行うことが多いと思われますが、これは例ですのでわかりやすくエンジンのシリンダヘッドカバーでチェックをしています。
シリンダヘッドカバーのボルトにテスト棒−黒色のワニ口クリップを挟みこんでいます。
テスト棒の+をあてていない状態では下画像のようにテスターの値は
OL(オーバーロード)を示しています
テスターで計測することができる抵抗の値をはるかに超えているという意味です
要するに、導通していない(つながっていない)ということです。
テスト棒を当てていないので当然の結果ですが、
下の画像のようにテスト棒をあてると0Ω(オーム)を示します。
この結果から赤色のテスト棒をあてて導通があった場所にアースを取ることができるということになります。
ポイントとしては、基準となるアースを見つけることです。基準のアースがとれていないと、正確な測定はできませんので注意が必要です。
補足・・・この値(抵抗値)は、はかる場所で差異がでますが、基本的には0Ωに近い数値が出ていれば導通があると考えてよいと思います。
ちなみに10メートルの電線を用意してその端と端の導通試験を行うと線にもよりますが、0.5Ωや1Ωに近い値を示す場合もあります。これは電線自体にも抵抗があるからなのですが
わかりやすくするために、今後の中上級電装編で解説致します。
また、抵抗レンジでの測定は上記のようなボディーアースの確認以外は単体点検で行うことが理想です。
簡単に説明すると電球を自動車に取り付けているまま測定しても適正な測定ができないということです。
また抵抗レンジで電圧測定のような測り方をするとテスターが壊れる可能性があります。
電球が切れているか切れていないかは、電球を取り外して電球単体の抵抗値をみることが大切です。
下記の画像はヒューズを単体点検している画像ですが、ヒューズの断線には目視で判断できない場合もあるのでこのような点検をすることもあります。
この測定の値は0.2Ωを示していますが、ほぼ0Ωに近いので正常であるといえます。
そもそもどうして抵抗(電装品)を通らずにアースしたらショートするの?といった疑問がでると思います。
ショートとは抵抗を通らずにボディーアースすることですが
電気を消費するものを通らずに+の電源と−の電源を接続すると、電流がたくさん流れてしまいます。
電流は水の流れで表すと水流になります。(ちなみに電圧は水圧であらわされることが多いです)
たくさんの電流が一気に流れると配線がたえることができずに焼き切れるといったことが発生します。
抵抗を通ることで、電流がいっきに流れる事を防いでくれているのです。
これが理解できるとヒューズなどの役割も自然に理解ができてきます。ヒューズは抵抗ではありませんが
電装品や配線にショートなどで電流がたくさん流れた際に回路を遮断して守るということが言えます。
自動車の基本電気回路は
バッテリ電源+(12V)から抵抗(電球など)を通りバッテリ電源の−に戻るという流れです。
これが非常に大切な基礎知識です。
(電源+)→(抵抗)→(電源−)といったながれが正常な回路です。
自動車の電気の点検では基本的には電圧の変化で不具合個所を判断します。
ようは12V電圧(エンジンが始動中であればオルタネーターの調整電圧の14V程度)が
かかっているのか、かかっていないのかということです。
複雑な回路や高度な診断では小さな電圧変化から異常を読み取るといったこともありますが
ここでは12Vあるのか、0Vなのかで理解していただければよいと思います。
自動車基礎電気回路
下記の図はバッテリのプラスとマイナスに電球のついた配線を接続した配線図です。
抵抗が電球でバッテリが電源です。
@このときの緑色までは電圧がかかっています。バッテリのマイナス端子にサーキットテスターの−を接続してサーキットテスターの+側を緑色のどこに当てても12Vの電圧(電位差)が出ます。
Aしかし抵抗を通った後の黒色の部分ではどこで測定しても0Vです。電位差がないということです。
要するにバッテリのプラスから抵抗までは12V電圧がかかっているが、
抵抗で12V消費(電圧降下)してしまうので抵抗より後の配線は0Vということです。
Bそれではバッテリの+端子と抵抗の間(緑色の部分に両方のテスターの測定棒をあてる)
をテスターで測定したときの電圧はどうなるでしょう?
ここで0Vと答えられる人はテスターの基本的な使い方と電圧(電位差)を理解していると
思います。
確かに緑色の部分には12Vの電圧はかかっていますが、サーキットテスターで12Vと12V
の間を測定しても0Vと表示されます。
サーキットテスターは電位差(電圧の差)を計測しているので12Vと12Vの間に差はありませんので
0Vという表示となります。
補足・・・DCV-METERと記載してあるのがサーキットテスターの直流電圧測定です。
本来は適切な方法とはいえませんが、実車ではこのような測定をしてみると電位差を理解しやすいと思います。
下記画像のヒューズには12V電圧がかかっているのにテスターの測定方法次第では
下記画像のように0Vとなることがあります。
ヒューズの端子同士をテスターで測定しても、両端子には12Vの電圧がかかっており電位差がありませんので下記の画像のようにテスターは0Vを示します。
ちなみにこれに12V表示した場合はどうか?
ヒューズが切れている可能性があることが予測できればテスターの基本が理解できていると思います。
実際に切れているヒューズをつけて上記の画像のように測定すると12Vを表示します。
ヒューズが切れているということは、ヒューズの片側の端子には12Vの電圧がかかっており、
もう片側はアース側となり0Vその間には12Vの電位差があるのでテスターでは12Vを示します。
オーディオ取り付けの際に+の電源配線を自動車のボディにショートさせたらどうなるか?
バチッといって電源が入らなくなる場合が多いと思いますがこのときにどこをみればいいのか
そこで基礎知識がある人はこう考えると思います。
自動車の配線には急な電気負荷から配線や電装品を守るためにヒューズがついているから
ヒューズが切れたのかもしれないと・・・
ヒューズを確認してみればよいのでは?
それではどのヒューズを確認すればよいのでしょうか、通常オーディオ等の電源であれば
ラジオ、オーディオ等のヒューズの確認からしていけばよいと思います。
もしどのヒューズが切れたかわからない場合はどうするのか?
ひとつずつヒューズを外して目視で確認するのもよいですがテスターを使うと効率よく
断線したヒューズを見つけることができます。
下記@〜Cの図は基礎的な配線図をわかりやすくしたものです。
緑色の部分が電圧(12V)がかかっている部分です。
Aのヒューズ断線はヒューズが断線しているため電圧がヒューズの手前まででストップしています。
実際の車での測定方法はヒューズの頭には被覆されていない部分がありますので両方の電圧をみれば
断線しているのか、していないのかがわかります。
※このときのテスターの−側はボディーアースもしくはバッテリのマイナスにあてます。
片方だけではAのように電源側のヒューズの端子には電圧がかかっている場合があります。
電圧の変化でヒューズの断線を調べるには下記のようにヒューズの両端子にテスト棒をあててみます。
どちらから電気が流れているのかわかっているのであれば片方の測定でOKですがわからない場合は
両方測定するとよいです。
バッテリのマイナスもしくはボディーアースをサーキットテスターの−側としたときにどちらの端子にも
下記の@正常回路でいえば12Vかかっていなければいけません。
※下記の配線図のサーキットテスターの値は@〜Cすべて12Vを表示します。
次はBの電装品自体が故障している場合です。電装品断線(電球断線と考えてもよいです)
この場合下記の配線図や上記の配線図をみて気がつく方もいると思いますが、
電源がオンのときのボディーアースにテスト棒の−をあて、抵抗より前にテスト棒の+をあてると
テスターの値は12Vを示します。
@の正常回路に近い電圧変化ですね。
抵抗で電気を消費して電装品より後の電圧はOVの@正常回路、B電装品故障は
断線で抵抗大で0V(回路が成立できていない)
となっていますので配線図でみれば紛らわしいものとなります。
また、電装品より前の回路で測定すればアースと比較すると12Vの電位差が出ます。
故障したものが電球であれば電気がつかないのですぐにわかると思いますが
電装品の故障でサーキットテスターで測定すると、結果的にはこのようなこともあるということを覚えておくと
応用が利くようになると思います。
この場合テスターで測定して電装品の直前までは12Vかかっているので
電源は正常という判断ができますね
次にアース側の回路が正常だと判断ができると、疑わしいのは電装品本体であると推測できます。
あとは電装品の単体点検をすれば正常か異常かを判断できます。
次にCのアース不良についてです。
Cの回路はアースの直前で断線もしくは接触不良であるとします。
アースが接触不良の場合、もしくはアース回路断線の場合は、上記の配線図では電圧はアースの不良の場所の直前まではかかり、12Vを表示します。
どうして抵抗を通っているのに12V消費(電圧降下)しないのか?
これも詳しくは電装の中上級編で解説しますが、
アース不良ということは回路が成立できていません。
上記の図ではバッテリの12Vの電圧がヒューズにかかり
その後、電装品(抵抗)にかかっています。
アース不良状態では電気の流れはアースの直前でストップしています。
電源+ → ヒューズ → 抵抗 → ボディーアース× 電源−
の部分のボディーアースが×となっているので電源+から電源−へと電気が流れることができないので
抵抗も電圧を消費することができません。
回路が成立していないので当然ですが
これを電球にあてはめると上記のCの抵抗を電球とした場合
電球はアースが正常に接続できていないので点灯しません
点灯しないということは電球で電圧を消費(電圧降下)することはないということです。
電球はアース側の回路が不成立なので点灯するという仕事ができませんね
電球が点灯するという仕事ができないということは、電球で電圧も消費しないという意味です。
抵抗より後のアース側の回路が成立していない場合は抵抗より後に
サーキットテスターの+端子をあて
バッテリにつながっているアース回路に−端子をあて測定すると
12Vの電圧がでます。
これがわかると、電球という抵抗よりもあとに12V電圧があるということは
実際の点検でもアース側に異常があるのではないか?
という推測をすることができます。
自動車電装、基本の確認
バッテリの+−両方の端子をケーブルなどでそのままつなげたらどうなるか?
ショートしますよね。
電源の+−を抵抗がほぼないといえる配線でつなげるのですから、非常に大きな電流が流れ配線が
ジュール熱により加熱し断線します。
それではその間に電球(抵抗)が入ったらどうでしょうか?
ショートせずに電球が点灯します。
これらは基本的な事ですが自動車電装の基本を理解するには大切なことです。
あとは理解が難しい部分があるときは実際に測定してみることが大切です。
サーキットテスターの電圧測定レンジで、自動車のいろいろな部分の電圧を測ってみることで
テスターの扱いにもなれてきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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